五十肩について
五十肩の原因と治療例について
肩の筋肉や腱、軟骨などの炎症によって肩周囲の筋肉が硬くなり、筋肉どうしが癒着して痛み・硬直による運動制限を起こすものを五十肩と呼びます。肩の関節包(関節を保護するカバーのようなもの)の内面に慢性的な炎症が起こることもあります。
正式には『肩関節周囲炎』といい、肩の筋肉の衰えが原因となることが多く、40代以降、特に50代に好発するため、五十肩(四十肩)と呼ばれています。
五十肩には上記のように筋肉や腱、軟骨の異常によるものだけでなく、打撲などの外傷、むち打ち損傷(首の筋肉やじん帯などが強い衝撃で傷付いたもの)が原因になる場合もあります。
特にむち打ち症で第3頚椎~第7頚椎のいずれかに変化が生じると、この変化が肩の痛みとなって表れることがあります。
外傷が原因の場合は、しばらく時間が経過してから炎症が起こるケースもあります。
また、内臓の疲労が原因となって起こる場合もあります(後述)。
五十肩になると、手を挙げたり、手のひらを返すような動きをしようとすると肩が痛むようになります。そのため髪を結ぶ、背中に手を回す、ネクタイを結ぶなど何気ない動作が困難になり、日常生活にも支障をきたします。
さらに悪化すると、わずかな動きでも激痛が走り、まるで肩が凍りついたようにほとんど動かすことができなくなります。
そのため、重度の五十肩のことをフローズン・ショルダー(凍結肩)ともいいます。
五十肩による運動制限は、自分の意志で動かしたときだけでなく、誰かから動かしてもらった場合の可動域も大幅に制限されます。
突然発症するケースは少なく、徐々に発症します。主に片側に発症しますが、治癒した後反対側の肩に発症するケースもあります。
五十肩のよくある原因
五十肩の痛みの原因は、必ずしも痛いところに潜んでいるとは限りません。
五十肩の原因を見分けるポイントは、激痛に襲われる時間帯。
朝方に痛みが出る人、昼間に痛みが出る人、夜中に痛みが出る人など、痛む時間帯によって原因が異なっている場合が多いのです。
早朝に痛みが出る場合は、肝臓、胆嚢、腎臓など、さまざまな内臓の機能低下。
早朝と夜間の痛みがひどい場合は、胆石の可能性も考えられ、狭心症が原因となっているケースもあります。
患者さんによって痛みが増す時間帯は異なりますが、夜間と寒冷時にひどい痛みに襲われるケースが多く、頚部、前腕部、手などに痛みが広がる場合もあります。
- [運動器系の変性などによる五十肩]
- 夜間痛や朝方の痛みはさほどひどくない
- 内臓疲労が原因である五十肩と比較すると肩の周囲の筋肉が硬い
- [内臓に起因する五十肩]
- 早朝(午前3~4時)にひどい痛みに襲われる
- 肝臓、胆嚢、腎臓など内臓の機能低下が誘因となっている場合が多い
- これらの内臓の異常が自律神経を通じて、肩に症状を引き起こしている
五十肩の治療例
~病期に応じた治療の目的について~
1.疼痛期(Freezing Phase)
動かさなくても肩が痛みます。また、就寝中に痛みが強くなります(夜間痛)。
日常生活では衣服の着脱、重量物の保持などが困難になり、症状が数週間続くために夜間痛で睡眠障害をきたすこともあります。
主に疼痛の軽減と筋肉の硬化予防を目的に、頚部~肩部、肘の循環改善のための鍼・マッサージ治療をします。
2.拘縮期(Frozen Phase)
激しい痛みは軽減しますが、肩関節が固まって動かしにくくなります。
疼痛は可動域の限界に近づいたときに生じるもの(Terminal pain)が中心で、この状態は数ヶ月~数年持続することがありますので、硬化改善を目的とした、鍼・マッサージ治療と肩関節・肘関節にアプローチする整体法を併用します。
3.回復期(Thawing Phase)
硬化が徐々に改善し、疼痛や不快感も減少します。
患者の大部分は数ヶ月~数年で自然回復すると考えられていますが、発症以前のようには肩が動かせなかったりと後遺症が残る場合もあり、完全に回復するとは言いきれないのです。
運動器系の筋肉や腱、軟骨の異常による症状に対しては、肩関節の周囲に鍼とマッサージによる治療を行います。
一方、内臓の機能低下や内臓の疾患が原因と思われる症状に対しては、その内臓につながるツボから治療ポイントを選択します。
患部に炎症、血流不全が起こっているので、強い刺激を与えると筋肉を硬くしてしまいます。マッサージを併用する際は、肩から腕にかけての筋肉に軽めの刺激を与えます。
夜間の痛みがひどい場合は、中枢神経(脳と脊髄)を鎮静させるため後頚部や頭部側面のツボを刺激します。
すなわち、頬車(きょうしゃ)・翳風(えいふう)・風池(ふうち)・瘂門(あもん)など頭部にある、中枢神経に近い位置のツボを選びます。
五十肩には体操も有効なので、肩関節周囲の癒着や硬化を防ぐために、極めて軽い運動から始めて少しずつ強度を上げていきます。
まったく負荷をかけずに肩関節を動かすより、可能ならば多少負荷をかけた方が効果的なため、2~3kgのダンベルを持って、肩関節周囲の筋肉を適度に動かす方が血液の循環も良くなり、症状の改善につながる可能性が高いのです。
プラスして治療の際に施術者が患部を動かし、肩関節周囲の筋肉を適度に運動させることで血液循環を促進して症状の改善につなげます。
内臓に起因する症状に対しては、軽い全身のストレッチを併用すると効果的です。
特に肩関節と肩甲骨、股関節をストレッチすることで、関節周囲の筋肉や腱、深層部のツボにアプローチできるので鍼治療と併用して行っています。